マッケイン氏:メープルリーフフーズは、製パン業や精肉およびパスタ製造業

マッケイン氏:メープルリーフフーズは、製パン業や精肉およびパスタ製造業などの分野で買収を繰り返した結果、現在の姿に至っています。こうした歴史から、我々は数多くの異なるオペレーティング・システムやプロセスを扱ってきました。ですが、カナダと米国の為替相場の等価水準が続くこれまでにないビジネス環境のなかで、他社との競争に打ち勝つためには、ビジネス・プロセスとチームを1つにまとめ、組織内で大幅なコスト削減を敢行する必要があります。

ハッチンソン氏:プロジェクトに着手したばかりのころ、当社には35ものERPシステムが存在し、しかもそれぞれが独自のプロセスを持っていました。我々が現在進めているのは、単一のSAPインスタンスを構築し、これによりメープルリーフフーズ全体に適用できる1つの共通プロセスを作り上げることです。多くの企業が、こうした作業に6年や8年、10年といった年月を費やします。しかし当社では、人事から支払勘定、売掛金勘定、サプライチェーン、製造までをも含む全社において、環境の一本化を4年で完了させようと試みています。

マッケイン氏:こういった大がかりなプロジェクトには、高レベルなリスクがつきものです。このスケジューリングを達成するのに直面するであろう最大の障害は、プロジェクトの初期段階で早くも明らかになりました。すなわち、どのビジネス・プロセスを基準とすればよいのかという問題です。これを解決するため、我々は3つの“ゴールデン・ルール”─「ソフトウェアをカスタマイズしない」「自社のプロセスをソフトウェアに適用し、その反対は絶対にしない」「ソフトウェアにフィードされるデータの整合性を保つ」─を設けました。ビジネス・プロセスの標準化に関するデータベースなどないわけですから、これらのルールは変更管理をしていくうえで非凡な有能さを発揮してくれています。誰かが私のところへやってきて「うちのプロセスのほうがいいよ」と言っても、答えは常に「ノー」となるわけです。

ハッチンソン氏:あるいは、SAPに変更を加えたいと思っている人がいるとしましょう。その人物の要望をかなえるには、マッケイン、2名のCOO(最高執行責任者)、CFO(最高財務責任者)、そして私の全員がそれに同意する必要があります。

 これまでに当社がSAPのコアに施した修正は、100カ所以下です。大半の企業では、そうした数はすでに1,000近く、もしくはそれを上回っているのではないでしょうか。

 したがって、我々のSAP実装はそれほど複雑にはなっておらず、必然的に後日アップグレードをしたり、時代についていくための更新を行ったりするのが比較的容易で、なおかつTCO(総所有コスト)も抑えられるのです。また、こうした変更を迅速に行えば行うほど、シェアード・サービス体制への移行も速くなり、効率性のアップが望めます。成長への投資をする余裕も生まれるでしょう。

マッケイン氏:エグゼクティブがどこまで監督するのかという点が非常に重要になります。私のCEOとしての役割は、直立不動の姿勢を貫くことではなく、ゲームのただ中で戦うことです。とはいえ、個々のプレーヤーに毎日電話をかけるような仕事は私の役目の範疇には入っていません。“コントロールする”と言うと、CEOがソフトウェアの一部分に対するあらゆる変更を認可しなければならないように聞こえるかもしれませんね。ですが実態はそうではなく、我々が取っているアプローチは実に基本的なものなのです。

 つまりは、CEOは企業において起こっている出来事をただ傍観しているために存在するのではないということです。詳細にまで踏み込んで、積極的にかかわっていかなければなりません。実務を手がけるわけではありませんが、導き手となる必要があるのです。